2007年度 ―異種混淆の賜物:世界の中の東アジア建築200年− “省察・規範・教訓・継承”

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建築史という学問は衰弱しています。現実の社会には貧困、食糧問題、地球温暖化、下流社会等々、実にさまざまな問題が起こっていますが、そこで建築史が貢献できる案件はいったいなんでしょうか。世界の遺跡や観光地めぐりの案内役や郷土建築史の編纂だけが、建築史の役割ではないはずです。本年は、私が現在、もっとも力を注いでいる研究対象のひとつ、東アジア、東南アジアのここ200年の都市と建築を素材に、建築史が持っているはずの、省察・規範・教訓・継承という4つの機能をみなさんとともに学び、さらにそれを発展させていこうと思います。 |

1)過去に刊行された論文、書籍を体系的に読む |
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一般に、日本では、建物と同様に、論文、書籍は短期的に消費されてしまい、同様の論旨の論考が忘れたころに重複して生産され続けています。その結果、過去の論点が充分に議論されずに、生煮えのまま放置されているのです。あいまいなままで置いておくことが美徳だという文化なのかもしれませんが、一方で、知の基盤が徹底して構築されないとの弊害もあります。今回の授業では、テーマに即した既往の論文、著作をできうる限り集め、そして、各自が読み込むことによって、これまでなされた議論の論点を明らかにします。 |
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2)それをもとに議論する |
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議論の重視という点には、カルチャースクールのような、一方的な知識の伝達を避け、双方向での議論の仕方を訓練するという意味も含まれています。一般的に建築史の講義は、珍しい異国、異時間に存在している建物や街のスライドや平面図などの図面を見せながら、それに建物にまつわるエピソードを交えて紹介していくという、受講者の受身の姿勢がきわだったものがほとんどだと想像します。自分の頭で問題を設定して考え、自分の言葉で自分の意見を述べ、他人を説得するということが、建築史や都市史を使っても可能だということを、みなさんに学んで欲しいと思います。知識の獲得ではなく、議論することの訓練だということを常に念頭に入れておいてください。 |
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場所
駒場第二キャンパス・生産技術研究所第14会議室(De104)
時間
13:00〜14:30,14:55〜16:26
スケジュール
10/04 現実世界と建築史の役割
10/11 東アジア建築の200年を、いまなぜ、いかに語るか
10/18 ゆるやかな移植と再編:1780年頃〜1880年頃
10/25 受容の形態−擬洋、欧化、工学:1840年頃〜1910年頃
11/01 建築・都市の帝国主義・植民地主義:1850年〜1940年
11/08 帝国主義化/植民地主義化する日本建築・都市
11/15 休講
11/22 憧憬/オリエンタリズム/ナショナリズム
11/29 都市、建築家、そして、「モダニティ」
12/06 冷戦、独立、グローバリゼーションと建築・都市 |
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1)毎回、読むべき論文、書籍(の一部)を、リーディング・パッケージとして、こちらで授業の一週間前までに準備します。
2)リーディング・パッケージは、主としてそのテーマに関する既往の論文です。毎回、十数本あります。日本語、英語のものが基本ですが、中国
語、韓国語、ロシア語の論文も含まれます。読めるひとはどんどん読んできてください。読めないひとのために、中国人、韓国人、ロシア人の
学生の方に、解説をお願いします。
3)参考文献のリストもあげておきます。各回のディスカッションをリードする方々、また、余力のある方々は、読んでおくといいでしょう。
4)リーディング・パッケージは、pdfで管理しています。
5)リーディング・パッケージの資料の中で、*がついたものは、各自購入してください。
6)連絡先:電話:03−5452−6442(星川)、03−5452−6443(岩根、本郷)、メイルアドレス:muramatsu2007jugyo@yahoo.co.jp(岩根) |

1.授業の前の準備: |
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リーディング・パッケージを毎回の授業までに読んで、さらに、ディスカッション用の設問への解答を準備してきてください。授業は、各自がそれらをすべて読み、解答を準備できていることを前提として進みます。
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2.授業の進め方(1回全180分): |
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1)本日の講義の趣旨説明(村松)20分〜30分
2)毎回、授業をリードする学生を事前に2人程度指名して、その学生さんたちに議論の流れを 作り、制御してもらいます。
3)そこで出てきた論点に関して、全員参加のディスカッションを展開します。
4)2)3)を繰り返し、最後に、その時間の全体像を、構造図としてまとめます。それによって、その時代の建築や都市の問題群の関係があきらか
になるはずです。途中休憩があります。
5)最後のまとめ(村松) 10分
6)終わった後に、時間がある方々は、村松研究室での番外討議に参加してください。 |
3.リーダーの役割: |
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リーダーは、各回2人、指名します。その人たちの役割は、リーディング・パッケージの資料、それとは別に列挙してある参考文献の書籍、論文を事前に読み、私の設問とは別に、独自の視点で論点を設定し、議論を活性化させることです。 |

最終的にレポートの提出があるかもしれません。たとえば、みなさんにとって、「建築史とは何か」、「東アジア建築史をどう構想するか」といったものです。
でも、基本的には、これらのリーディングスを読み、思索し、議論し、みなさんで「建築史」とは何か、「建築史家」とは何か、「建築史的思考」の意義、「東アジア建築の200年」が理解できればいいのではないでしょうか。
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